トヨの「今日も眠いです」

睡眠時間がとにかく長い猫~トヨ 2017年3月14日、永遠の眠りに就きました

2017年04月

ここは都会のはずれにあるマンションの一室。

部屋の中で一番陽当たりのいい場所に、一匹のキジトラ柄の猫が眠っています。

実はこの猫、猫のことを何も知らない住人に猫について教え導く為、12年前にここへやって来ました。

猫の先生でした。
猫の先生は、眠っているフリをしながら、実は住人のことを毎日観察していました。


















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もう12年も経った。
あなたは猫について、たくさん学んだね。
よく頑張ったね。


あなたは、身体の小さかったわたしを大切に大切に傷つけないようにいつも優しく抱いてくれた。
寒い夜は、わたしを羽毛布団とあなたの体温で包んでくれた。自分の肩が布団から出ていても、わたしが寒くないようにと、暖かくしてくれた。


12年の間に、あなたはわたしの要求を理解するようになった。
たとえ早朝でも深夜に及んでも、わたしの要求を嫌な顔ひとつせず、受け入れてくれた。


猫のことをたくさん学んだね。
偉かったね。
悲しいことも楽しいことも、猫についてたくさん学んだね。
教え甲斐があったよ。


12年の間に、あなた自身が辛くどうしようもなくなってしまったこともあったね。
何も出来ず何も受け付けず、その時期のあなたはそれまでとは違う日々を送った。
そんなときさえも、あなたはわたしのことだけは忘れなかった。
猫と暮らすということはそういうことだと解っていたんだね。
辛くどうしようもなかったはずなのに、わたしにごはんをありがとう。水をありがとう。
わたしはあなたの側に寄り添うしかことしかできなかった。
一緒に寝ることしかできなかった。
わたしの背中や頭にあなたは顔を埋めていたね。
猫と一緒だとぐっすり眠れるはずだよ。それも教えたよね。
わたしの背中や頭が濡れてしまうことがあったね。
人間は辛い時に目から水滴を落とすのだとそのときわたしは初めて知った。
人間って、不思議な生き物だとわたしは知った。
近くに寄り添うことしかできなかったけれど、あなたが少しずつ落ち着きを取り戻していくのを見ていたよ。


12年の間に、わたしはあなたと同じ年齢になり、あなたの年齢を越えてしまった。
それでもあなたはまったく変わらず、わたしの側にいて、優しいまなざしでわたしを見つめ、声をかけ、ゆっくりと頭や背中や顎を撫でていた。
とても心地よかった。


12年の間に、あなたは、猫にしつこくするのはいけないことだと知った。
距離感というんだよ。
なかなか覚えが悪かったけど、まあまあ出来るようにはなっていた。
出来なければ罰として手の甲に噛みつくことにしていたよね。
わたしがあなたよりずっと歳上になってからも、時々罰を与えることがあった。
そんなとき、あなたはいつもにこにこしていた。
もしかして、わざとしつこくしていたのかな。
だとしたら、人間って、おもしろいね。


猫のことを、日々学び続けた。
たくさん学ぶあなたは私には楽しそうに見えていた。
わたしのことを誰かに話す時、わたしにはあなたが少し誇らしげにしているように見えていた。
猫と暮らす人間は誰でもそうなんだよ、とあなたは言っていた。
人間って、おかしな生き物なんだね。


















猫に、死という概念はあるのかな。
あなたはわたしを見ながら、ある日そう思っていたよね。
わたしは、ただ生きるだけだよ。
寝て、起きて、ごはん食べて、寝て、少し動いて、寝て、排泄して、寝て、そして、また眠る。
ただ生きる、それだけだよ。
わかっていたよね。
わたしはあなたに、そう教えた。
あなたは、しっかりと学んだ。


















あなたの姿が見えなくなったとき、それでもあなたの匂いは感じていた。
声も聞こえていた。
わたしを触るあなたの手の感触、胸のあたたかさ、包む両腕の優しさ、いつもと変わりなかった。
あなたの匂いが消えたとき、それでもあなたの声は届いていた。
ずっと側にいることを感じていた。
それまで以上に何度も何度も繰り返し抱き上げたよね。
それまで以上にあなたが力を入れていることがわかった。
でも全然痛くはなかったよ。
わたしを傷つけないように大切に大切に胸に抱いているのはずっと同じだったから。
わたしのおでこに水滴が落ちてきたよ。
人間は目から水滴を落とす生き物だからね。


あなたはわたしを何度も何度も繰り返し胸に抱いた。
しつこいくらいに。
でも、それは、それまでのしつこさとは違っていた。
ちっともいらいらしなかった。
わたしは穏やかな気分だった。
とても落ち着いていた。
だから、大丈夫。
もう噛まないよ。


















わたしはあなたの前から消えた。
あとは、あなたに任せる。


目から水滴が落ちるなら、落ちない方法をかんがえなさい。
猫がいなくて眠れないなら、眠れる方法をかんがえなさい。
あなたは、わたしのことで、色んなことを考える人だった。
だから、きっと、答えは見つかるよ。

















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わたしはあなたの前から消えた。
あとは、あなたに任せる。


いつまでもあなたの近くに漂っていてもいい。漂っていなくてもいい。
ずっとあなたを見守っていてもいい。見守っていなくてもいい。
常にわたしの一部を持ち歩いてもいい。持ち歩かなくてもいい。
写真のわたしに話しかけてもいい。話しかけなくてもいい。
あなたの中に入りあなたと一体になってもいい。一体にならなくてもいい。





わたしは、あなたの願う通りになるよ。








猫の先生のおはなし








もうひとつのトヨの『今日も眠いです』











難しいことは解らないけど。
仏教も自然科学も人間科学も勉強したこともないので知らないけど。
2回言ってみた。


何が言いたい、私よ。


まとまってない。
自分でもわからない。


状態は徐々に違ってきている。
何か不安定な所に居て、安定した所に移動してもまた足下が崩れる。
そんな、たゆたう日々はもう過ぎた。
と思う。


常命なれば仕方ない。
ノラや、にそんな一節があった。
ずっと頭にあった。


命あるもの必ず尽きる。
そんな当たり前のことは、当たり前に理解している。
それなりに生きてきて、それなりに経験して、私は物事を割りと冷静に捉えられる人になったと自覚している。
トヨの死に直面しても、その死そのものはすぐに受け入れることができた。


色即是空。
会者定離。
生者必滅。
私は、地球上の生き物森羅万象全ては地球の一部だと考えている。
死ぬことも含めて生きる、ということだと考えている。
死ねば地球に還る、と考えている。
その意味に於いては、部屋にお骨を置いているのでトヨはまだ地球に還していない。


私にも感情が存在する。
冷静さを失ったことがあった。
自分を見失いかけたことがあった。
揺れまくった。


今の私の中にある、重い塊のようなもの。
トヨが死んだ直後からあった訳ではない。
わからない。
あったのかも知れないし、それを感じる余裕が無かっただけかも知れない。
私の表現では、重い塊のようなもの。
人それぞれに表現は違う。
心に風穴が開いたまま。心の底に滓が溜まり揺らいでいる。
それらは、欠落であり、喪失であろう。
と教えられた。


四十九日、百箇日、一周忌。
人は、区切りをつける。
心に区切りをつけようとし、それをきっかけに気持ちを切り換える。そう努力する。努力せずとも自然とそうなっていくこともある。
と、聞いた。


敢えてそうしようとのつもりは無かったが、今は悲しみの中からは抜け出しつつある気がしている。
数えてはいなかったが、どうも四十九日が近い。
今のところどうやら教科書通りに私の心や脳は動いているようだ。


教科書通りの症状では説明のつかなかったことの多いトヨとは違い、私は案外単純なのかも知れない。

















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とよちゃん。
そうは言ってもね、まだなんだ。
可愛かった姿や面白かった動きを思い出すことはあるんだよ。
でも、それは、意識して、思い出そうとして思い出してるんだよね。
前日と当日の姿が頭に強く残ってるからかな、不意に勝手に頭に浮かんでくるのはそればかりなんだ。
そうすると、重い塊のようなものがそこにあることを意識するんだ。
感情が止まる気がするんだ。
変だね。

















悲しみの中から抜け出せそうなこと。
重い塊のようなもの。
私の人生経験によって培われた私なりの思考や感情でもあり、もともと人に備わっている仕組みでもある。
仏教も自然科学も人間科学も勉強したこともないので知らないけど。
3回目。


仏教もある意味で科学なのか。
いや、そもそも全てが地球の一部なら、もっと大きく捉えると何もかもが宇宙の摂理。
うん。もう、訳がわからない。
じたばたしても仕方ない。
とりあえず、明日の準備して、明日のために眠ろう。


いつか、私の中にある重い塊のようなものを意識する時、寂しさはあったとしても懐かしさで
優しくトヨを思い出すことが出来るはず。


そうなりたい。
















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ね、とよちゃん。
テレビに夢中で聞いてないか。






もうひとつのトヨの『今日も眠いです』





3月14日。
朝、トヨが亡くなったあと、病院に電話をかけ、その後、数人にメールで知らせました。


仕事では、やらなくてはいけないこともあり、早朝から同じチームのひとりにどうすればいいか相談していましたが、他の人でカバー出来るから休んでいいよ、休みなさい、とのありがたいご返事。
返事をいただいた少し前にトヨは亡くなっていました。
そのことも改めて連絡しました。


何故だか、トヨが死とは直結していなかった若い時分に、なんとなくここがいいかな、と考えていた移動式火葬の会社のHPをブックマークしていました。その時がきたら、此処に連絡しよう、と考えていました。なんとなく。


火葬社に電話。
会社といっても個人でされている様子で、1日に執り行える件数は3件が限度とのこと。
14日と15日はすでに予約が入っていたため、16日に予約。
電話をかけた時「以前にHPを拝見していて、何かあったらこちらに、と考えていました」と切り出したところ全てをすぐに察し、「ということは…」とこちらの気持ちを汲んで優しく話を聴いてくださいました。
保冷のコツも教えていただき、おかげさまで火葬までの約2日間、トヨは腐敗することなく、臭いもなく、綺麗な状態のまま、部屋で眠ることができました。


部屋を片付け、トヨが数回しか使わなかったカドルベッドを台座代わりに、保冷剤を必要な場所に仕込み、それまでソファーに安置していたトヨを移動。
祭壇など持ち合わせていない。
背の低いチェストに置いていたTVを降ろし、
トヨを安置し直しました。
何か足りない、そうだ写真写真。
ずっと前にA4サイズにプリントしていた写真ファイルの中から出来るだけ可愛い姿の物を選び、壁に貼りました。


ひとり、ああでもないこうでもないと、片付けたり、物を動かしたり、ばたばたとしている私とは正反対に、トヨはまるで微笑んでいるような、ただ眠っているだけのような、それはそれは穏やかな、優しい、そんな顔で静かに静かに眠り続けていました。




3/15。
仕事に行くつもりでした。
「翌日はまた休みを頂くつもりだけど今日は出勤します」
同じチームのひとりに、朝、そのようにメールしていました。
私の今いるチームの人数は計8人。内、私と同じく午後からの出勤は3人。残り5人は午前中からの勤務帯。
連絡していたのは午前チームのひとりです。
部屋で準備をしていた時に、既に出勤していたその人から返信のメール。
5人全員声を揃えて「いやいやいやいや、休みなさい!」と。
ありがたい話です。
理解ある人々に感謝です。
お言葉に甘えてお休みすることにしました。
会社へは私の体調不良ということで、お休みする旨連絡しました。
有給は減る一方でしたが。


生花が要るな。
これまでに、亡くなった猫たちのいくつかのブログを目にしていました。
とても綺麗でした。
何故だか、トヨが死とは直結していない幼い頃から、いつか死ぬときには花を買わなくては、と考えていて、以前のマンションの時も今の部屋に越してきてからも、それぞれに近所の花屋の場所だけは把握していました。その時がきたら此処で買おう、と考えていました。なんとなく。


思いがけず時間が出来たので、近所の花屋に行きました。
花を部屋に飾ることとは縁遠かったため、何をどのくらい買えばいいのかさっぱり検討がつかず、花の種類も知らず、決して広いとは言えない花屋の店頭と店内であっち行ったりこっち行ったり、手にした花をやっぱり戻したり、また店頭に行き、また中に入り、今度は只眺めていたり、を繰り返し、恐らくはかなりの不審人物風情だったと思われます。
優しそうなご主人が声をかけてくださり、やっとまともに買いものができました。


夜、私の布団の横にトヨを降ろし、横向きに向かい合うようにして眠ることにしました。
今までずっと一緒に腕枕してくっついて寝ていたけれど、この夜ばかりは温める訳にはいきません。
この頃はまだ朝晩かなり寒い時期でした。
トヨが死んだ直後から、部屋のヒーターはスイッチを切っていました。
しばらくは手を繋いでいましたが、氷のように冷えたトヨの手を握っていると、私の手も冷たくなってきます。
私だけは羽毛布団にくるまってはいましたが、トヨの手から伝わる冷たい温度はやがて私の背中や足先まで伝わってきます。身体中が凍えてきました。
ごめん、と言って、手を離して眠りに就きました。




3/16。
目覚めた時、私の方を向いてまだ眠り続ける可愛いトヨの顔を見て、何故かほっとしたことを覚えています。
いつもと変わらない。
そんな錯覚を、目覚めた一瞬、覚えました。
私より先に起きることもあったけれど、私が起きるまでトヨも起きない、ということも度々だったから。


花が足りない気がしました。
部屋に飾る分と、トヨの姿かたちが変わってしまうその時に一緒に並べる分と、やっぱり足りない。
昨日の花屋へ向かいました。
またしても、うろうろと所在なさげにしてたのでしょう、声をかけてもらいました。
実は猫が死んだ。今日、火葬をする。
事情を話してしまいました。つい。
ご主人は私が選んだ花をまとめながら、これも猫ちゃんの側に置いてあげて、数日経っているけどまだまだ充分綺麗だから、と数本の花を譲ってくださいました。
僕も動物と暮らしてるから、気持ち、少しだけどわかるよ。と優しい笑顔で。
花を抱いて店を出るとき、私も笑顔でした。


棺無しの火葬だったので、火葬炉に入れる直前までトヨを大切に抱いていられました。
硬くなってしまっていたけれど、ずっと胸に抱いていられて、とても幸せでした。
悲しかったけれど、とても幸せでした。
いつまでも抱いていたかったけれど、それは当然叶うわけもなく、真珠色の綺麗な布団の敷かれた火葬炉にトヨを静かに置き、花を並べ、頭や背中を撫で、お別れしました。


















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とよちゃん。
何も知らない私は、すぐに火葬をするものだとばっかり思ってたんだ。
思いがけず2日間も一緒に過ごす時間を与えられたんだ。
ゆっくりと準備ができたんだ。
濃密なお別れの時を過ごせたね。
色んな人たちのおかげだね。
とよちゃんの猫徳かもね。














火葬も花屋も漠然と想像していたことが次々に現実になってしまうことに、その時はそれほど抵抗感はありませんでした。
トヨに尽くすことが当たり前で、きちんとしなくては、との思いがあったのかもしれません。
やらなくてはいけないことをやることで、自分を忙しくすることで、平静を保つように仕組まれているのかもしれません。
また脳の話になりそうなので、これはここまで。







お骨になったトヨをいつも使っていた膝掛けでくるみ、大切に胸に抱き、帰路につきました。
花屋の前まで来た時、店の中へと足が向いてしまいました。自然に。いや、つい。
ご主人に報告しました。つい。
お骨になって帰ってきました。お花、ありがとうございました。とても綺麗でした。と。
ご主人は相変わらず穏やかな笑顔で応えてくださいました。
昨日今日ちょっと花を買っただけの客なのにね。
迷惑な話だよね。

















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以来、毎週末、花を買い続けています。









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今でも、何かしらおまけを付けてくださいます。
ありがたい話です。
感謝です。









もうひとつのトヨの『今日も眠いです』



3/15(水)
体重 2.7㎏
抱っこした感覚が生前と変わらない。
元々やせてしまっていたからかな。
胸の中でただ眠ってるだけみたいだよ。
すごく冷たいけど。
今でも毛がやわらかい。
トヨを落とさないよう傷付けないよう大切に抱くから、トヨの身体が私の方へ寄せられるように抱くから、生前のトヨが体重を全てこっちに預けてたのと同じ感覚なのかも。





3/16(木)
1:00pm 打ち合わせ(火葬)

◯◯公園へ

1:40pm頃 トヨ、火葬炉へ

1:55pm 火入れ

3:00pm頃 れんらくあり
クールダウンのため、あと15分くらい?

3:20pm お骨上げ



どうもありがとうございました。

先生、花屋さん、火葬屋さん、ありがとう。

トヨちゃん、本当に居なくなってしまいました。
胸に抱いた感触が、もう薄れてきてます。
トヨのにおいが、どんどんなくなります。

トヨちゃん優先で生活してました。
トヨのために、色々とルールを決めてました。
もう何も守らなくてもいい。
だってトヨいないからね。
トヨちゃん。さびしい。



・・・・・・・・・・



以上で、トヨノートは終了です。



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今の部屋に引っ越したのは、昨年8月。
もっと一緒に過ごせると思っていました。
















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とよちゃん。
とよちゃんにとってはいきなりの引っ越しだったね。
びっくりさせてごめんね。
この部屋からの眺めはどうだったかな。
富士山、見えてたかな。
とよちゃん。
最後の夜、抱っこして一緒にベランダに出たよね。
もう何もかも見えなくなってたけど、鼻をひくひくさせてたね。
引っ越してきてから、よく抱っこして一緒にベランダに出たよね。
大通りを走る車や歩く人をドキドキしながらも興味津々で眺めてたよね。
最後の夜、いつもの匂いや音、感じてたかな。
















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トヨを喪ったばかりの頃と比べれば、かなり落ち着いてきました。
色んな人に心配をかけてしまいました。
今は、私なりに、それなりに、がんばっています。
たかが猫を喪っただけなのに、こんなにも大変な日々を送ることになるとは、想像をはるかに越えていました。
たかが猫一匹喪っただけなのに。

私にとってはかけがえのない存在でした。
周囲の理解ある人々に支えられています。
どうしてもどうしてもダメな日もあります。
トヨの居ない毎日が日常になってしまったことを変えることは出来ません。
なんというか、心の中に、何か重い塊のようなものがある気がしています。
それが私に何かする訳ではなく、ずっとある訳でもなく、気付くとただ、そこにあります。
そんな感じがします。

無理し過ぎないよう、自分のペースで進んで行ければな、と考えています。
トヨとの楽しかった日々を、ひとりでいても優しく思い出せるように、そんな風になれるよう、自分のペースで。







もうひとつのトヨの『今日も眠いです』

トヨの居ない暮らしが当たり前になってきました。


何かしている時、こういう時にはトヨはこうしていたよな、など思い起こすことはあります。
そんな時、なんというか、懐かしいとか寂しいとか、そんな風には思いません。
だからと言って、あれは可笑しかった楽しかった、とも思いません。


感情が出ないまま、ただ、トヨの面影だけが浮かびます。


写真を見ても、写真は平面で、写真のトヨを撫でても当然ただ平べったい壁面を触っているのと変わりありません。

















トヨの日々の様子を観察し、ノートにメモをしていました。
基本的には排泄と嘔吐のメモで、通院や投薬の記録、他に何か気になることがあればその都度書き込み、時々体重もチェックしていました。


12月に左手が悪くなり、ある時から劇的に良くなりました。その後も気にしている様子は皆無ではありませんでしたが、4本足で生活し、タワーの登り降りもしていました。
減少していた食欲は戻ったり、また減りおとなしく過ごしていることもなどありましたが、もともとおとなしく過ごす傾向もあり、また寒い時期には特におとなしくしていたため、それがトヨの普通なのか調子が悪いのかは判断出来ていませんでした。
もしかしたら脳内で何かが静かに進行していたのかもしれません。

















3/11(土)
・後ろ足?
・念のため動画撮影。こっち見ておこってる。

7:00am おしっこ
午後(時刻不明) おしっこ
8:30pm 猫用トイレでおしっこ

[捕捉]
座り込んだトヨを触ろうと差し出した私の手に可愛い声を出し怒り、パンチ。こちらを睨んだ後、歩いて場所を移動。バランスはやや微妙?





3/12(日)
・後ろ足、力入りにくい?
・よたっている。
・ごはんちょっとしか食べない。
・動画撮影。こちらを見ながらこちらへ向かってくる。
・夕方、病院へ。
・夜、自分から私の方へ寄ってきた。
・ごはん少し食べたよ。
・注射、効いたかもね。

2:50pm 猫用トイレでおしっこ

[捕捉]
夜はごはんを自ら食べていました。少しだけ。
病院に連れて行って、少し元気出たような、あまり変わらないような。
昨夜も今日もおしっこは猫用トイレで。
ソファーにジャンプすることは出来なくなっていました。





3/13(月)
・朝。お風呂の奥やキッチンを歩く。よろけてるけどね。
・左手先もぎゅっと掴んでくる。気のせい?
(右手より弱いけど)
・後ろ足肉球冷たい?
・右手、むくんでる?腫れてる?
(投薬の時少し曲がっていたのでよく見ると左より太いことに気付く)
・動画撮影。よたよたと歩く姿を撮影。
・夕方、病院へ。
・目、よく見えてないかも。
・瞳孔の開き具合に左右差あり。
・眼振はない。
・午前中は見えてたんじゃないでしょうか。夜はもう見えていないと思われます。全く見えてないのかどうかは分からない。隅へ、隙間へ、と進んでしまう。

1:30pm
・布団の上でおしっこ動作。抱えて床へ。うろうろ歩き回って最終的には布団の横の床の上でおしっこ。布団の上でしたつもりかも。

9:30pm
・うろうろ歩き回って壁の隅へ。隅に立ち上がって伸びてガリガリ。先に行けなくてそのままずるずるとお尻から座り込みおしっこ。
・失禁という感じ。
・寝て、起きた時、立ち上がりの1歩目は必ず右へ倒れちゃうね。かわいそうだよ。
(腰砕けてる感じ)

10:00pm
・抱っこ→時々ピクッとする。

11:30pm
・横になったまま四肢を軽快に動かしている(歩いているかのように)
・起こすと立てない。右手もダメかも。


[捕捉]
壁づたいによろよろと歩いていました。行き止まりでは何故それ以上進めないのか理解出来ないのか、そのまま立ち止まっていました。
後退することが出来ないらしく、隙間に入ればそのまま力尽きて座り込んでしまいます。
困ってしまったのか、低く怒ったような助けを求める甘えたような声を出しました。
夜、視力は完全に失いました。
物を避けることが出来ません。それでもどうにか越えて行こうとします。食事台に並ぶごはん皿や水入れももはや障害物以外の何者でもありません。場所の感覚も分からなかったのでしょう。お皿を越えて行こうとするため、そこに足が入っても汚れたままそのまま先へ進もうとしていました。
夕方、ほんの少しだけごはんを食べました。膝に抱っこしたトヨの鼻先にごはんを差し出すと、確認するように顔を動かしながらパクッパクッと少しだけ食べていました。きっと、匂いはするけどよく見えず不思議に感じていたのでしょう。
夜、ごはんは全く食べませんでした。
鼻先に差し出しても匂いを嗅ごうとする仕草すらしませんでした。
歩くことが困難になったトヨでしたが、横になって眠っている時に四肢を動かしていました。まるで歩くように駆けるように。
自分の意志とは別に勝手に四肢が動いてしまう
のでしょうか。だから、起きている時は歩けないにもかかわらず先へ行こうとしたのでしょうか。
声をかけ、撫でて、抱っこしました。
何度も何度も。





3/14(火)
6:00am
・私、起床。昨夜は2:00am前には寝落ち。
・寝る前に何度かどこかへ歩いていこうとするトヨ。→歩けずどこへも行けない。倒れながらも進もうとしていた。
・最終的には一緒に布団で寝る。
・布団で寝ながら失禁していた。(昨夜もトイレに行こうとしてたのかな)
・おしっこしてたのに、お尻はそのままそこで横になっていた。おしっこはあまり臭くない。
・目の焦点が合ってない感じ。
・抱っこしたり(頭を支えるだけでも)すると、四肢を動かす。
・全然鳴かない。
・ごはん(昨日の夜も)、新しい缶詰めオープンしてるが全く反応示さない。昨夜から何も食べていない。水も飲まない。嗅覚もダメになった?
・呼吸ペースは普通かな。

7:07am
・咳のような、ガラガラしたような感じ、"ガッ"と大きく短く息を吐き出す。何回か、間をあけて。
・呼吸弱い。
・頭やアゴを撫でても目を細めるような反応なし。
・瞳孔開いている(部屋電気つけて明るいのにね)

7:20am
・よだれ。
・"ガッ"
・後ろ足で体かこうとする?あたま、かこうとする。
・だっこしても体に力入ってない。首だらんとしている。
・かくまく、よれてる。
・よだれ。

8:05am
・抱っこ(体に全く力入ってない)→失禁

8:13am
・お尻のぞいてみる。ポタポタとおしっこたれている。しかん、してきたのかな?

8:26am
・抱っこ
・反応なし
・おろすとまたおしっこポタポタ
・永眠の判断ってどうすればいいのかな

9:00am
・相変わらずおしっこポタポタ
・声掛け反応しない
・よだれ
・肉球冷たいね

9:13am
・はくだく、しゅんまく
・動かない
・「永眠」だと思う
・目開いていたので閉じさせる


[捕捉]
最後の朝、トヨは布団の中で手足をピンと伸ばしていました。
目覚めてまずその姿を見て、私が眠っている間にトヨは息を引き取ってしまった、と一瞬こちらの息が止まりそうになりました。
トヨのお腹がゆっくりと上下に動いているのを見て、呼吸している、生きている、と安堵したことを鮮明に覚えています。
ただ、トヨはもう自ら動くことが出来なくなっていました。
レンチンして香りの立ったごはんを鼻先に持っていってもまったく反応しない姿を見て、"猫は生きるために眠り、死なないために食べる"という何処かで目にした一文が頭に浮かんでいました。

とにかくトヨに寄り添うだけでした。
冷静でした。
写真も動画も撮りました。
















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とよちゃん。
あっという間だった。
すごい急ぎ足だったね。
びっくりしたよ。
とよちゃん自身もびっくりしてたかもね。
















トヨの面影はもちろん私の中にあります。何かにつけて、トヨが思い起こされます。
感情が出ない、と書きましたが、その通りでもあり違うようでもあります。
過去のブログを読み返し、笑ってしまうことがあります。
プリントした写真や撮りためたデータを見て、ずっと見続けていると、もうここに居ないことに愕然としてしまうことがあります。
上手く言えないのですが、ただ映像を頭に浮かべる時は、ただトヨの映像が浮かぶだけで、感情や行動の伴う場面(トヨと私)を思い浮かべる時には違うようです。



泣いてばかりいる訳ではありません。
普通に落ち着いて生活しています。
悲しむ時よりも落ち着いている時間の方が長くなっている気がします。
落ち着いているのか、何も考えないようにしているのか、そこがまだよくわかりません。
そんな段階なのかもね。
と、また自分を分析しております。





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こんな可愛い生き物が側にいる、存在している、生きている、それだけで奇跡です。
たくさんたくさん抱っこしてください。
撫でてください。
声をかけてください。










もうひとつのトヨの『今日も眠いです』



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