ここは都会の片隅にあるマンションの一室。
この部屋で一番陽当たりの良い場所では、かつて、一匹の猫が眠っていました。
猫の先生です。

猫の先生は、今はもういません。
もういませんが、今でも住人は先生のことを思い、先生も住人のことを思います。
猫の先生は、住人が道に迷いそうになると、寄り添うようにその周囲を漂います。
けれど、その姿を見せることはありません。







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あの日から三年半が経ちました。
わたしのいない世界を、あなたは生きています。
あなたが心の内で発する声に、わたしは返事をすることが出来ません。
わたしを失くした世界で生きるあなたに、それでもわたしの思いが届いているでしょうか。
きっと受け止めてくれるでしょうか。







わたしは、あなたのことが好きでした。
あなたのことを信頼していました。
だから、すべてを任せました。


猫は何も言いません。
だから、あなたは不安になることがあったかもしれません。


あなたがわたしのためにしたことを、わたしはすべて受け入れました。
本当はあなた自身がそうしたかっただけだったとしても、それでいいのです。





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あなたと過ごした最後の朝。
何も食べず何も飲まないわたしの口に、あなたはほんの2,3滴の水分を含ませようとしました。
わたしへの心配、わたしが去ってしまうことへの恐怖、様々な思いがあったことでしょう。
すぐに吐き出して咳き込んでしまったわたしの様子に、あなたは慌てて汚れを拭き取り、わたしに何度も何度も謝りました。


大丈夫だよ。
気にしてないよ。


わたしのためだったのか、あなたがそうしたかっただけなのか、そんなことどっちでも構いません。






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あの日から三年半が経ち、あなたはわたしのいない暮らしを恙無く過ごしているようですね。
わたしのことを思わない日はないけれど、わたしのことを考えない時間は確実に増えましたね。
それでいいのですよ。


時には、あなたの心にあるわたしの形をした穴が疼くこともあるでしょう。
それも、それでいいのですよ。


わたしは、あなたのことが好きでした。
あなたのことを信頼していました。
だから、すべてをあなたに任せます。
これからも。
あなたの思うとおりに。






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あなたのことを大好きな、陽当たりの良い場所でくつろぐ二番目の猫とともに、あなたの思うとおりに暮らしてください。
あなたがそうしたい、と思うとおりに。














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